シェンゲン協定「90/180日ルール」を徹底解説
暦年ではなく、常に期間がスライドするローリング方式。到着日も出発日も滞在日数にカウントされます。複雑なルールの正しい仕組みを解説します。
- 対象期間はカレンダー通りの「1年」ではなく「直近180日間」。毎日1日ずつ前にスライドしていきます。
- 入国日と出国日は、どちらも丸1日としてカウントされます。
- 「90日」は国ごとではなく、シェンゲン圏全体での合計日数です。
- 長期滞在ビザや滞在許可証での滞在はカウント外ですが、短期滞在ビザはカウント対象です。
ルールの本質:正確にはどういう決まりなのか
短期滞在者は、シェンゲン圏内で「あらゆる180日間のうち最大90日」滞在できます。この表現の細部が極めて重要です。「1年あたり」でも「1か国あたり」でもなく、国境を越えたり年が明けたりしてもリセットされることはありません。
180日間は、判定対象となる日(通常は審査官がパスポートをチェックしているその日)から過去に遡って計算されます。
何をもって「1日」とみなすか
滞在の始まりと終わりの日は、どちらも丸1日としてカウントされます。夜11時に着陸しても1日、朝6時の便で出国しても1日です。半日計算や猶予時間はないため、短い旅行を繰り返すと想像以上のスピードで日数が消費されます。
- 入国日と出国日は両方カウント:金曜日から日曜日までの旅行なら3日分を消費します。
- シェンゲン圏内の空港乗り継ぎ:入国審査を通過した時点でカウント対象になります。制限エリア(エアサイド)内にとどまる乗り継ぎなら対象外です。
- アイルランドとキプロスでの滞在はノーカウント:どちらもEU加盟国ですが、シェンゲン協定の日数には含まれません。
期間枠は毎日スライドする(ローリング方式)
ここが多くの人がつまずくポイントです。180日間の枠は固定されておらず、毎日1日ずつ前に進みます。シェンゲン圏で過ごしたある1日は、その日を着点としてちょうど180日経つとカウント対象から外れます。そのため、今日時点では上限オーバーでも、何もしないまま2週間待てば上限内に収まることもあります。
具体例で見てみましょう。1月と2月をポルトガルで過ごし(59日)、4月にイタリアへ3週間滞在(21日)したとします。合計は80日です。その後、6月に再び1か月間滞在したいとします。その旅行の最終日から180日遡ると、1月の大半が計算対象期間からすでに外れているため、80日+30日で90日を超えるように見えても、実際には問題なく滞在できます。
よくある3つの誤解
非常によくある間違いのうち、特に注意すべき3つのポイントを整理します。
国ごとの上限ではない
フランスで90日、スペインでさらに90日滞在すると、圏内滞在は180日になります。上限の90日は全29加盟国で共有される枠です。
1月1日にリセットされるわけではない
ルールの中に「カレンダー上の年」という概念はありません。滞在したその日から180日が経過するごとに、使った1日分が順次カウントから外れていくだけです。
一度圏外に出てもカウントは消えない
ロンドンやイスタンブールで週末を過ごしても、何もリセットされません。すでに使った日数は、180日の枠から外れるまで残り続けます。
90日を超えて長く滞在したい場合
90日の制限を超えて合法的に滞在するには、シェンゲン協定ではなく各国独自の制度を利用します。特定加盟国の長期滞在ビザ(タイプD)や居住許可があれば、その国に90日を超えて滞在でき、その期間は本ルールの計算から除外されます。ただし、他の加盟国に滞在できる日数は増えません。同様の仕組みとして、デジタルノマドビザや不労所得者向け滞在許可を設けている国もあります。
数日間だけ圏外に出てすぐ戻ったり、別の国から再入国したりしても通用しません。出入国管理システムは共有されており、現在では審査官がスタンプを目視確認する代わりに、出入国管理システム(EES)によって自動判定されます。
自分の滞在日数が安全か不安ですか?シェンゲン計算ツールを開くで、予定している旅程の日数をチェックしてみましょう。